みんなで食べる時間をシェアする −Share BBQ-

 たまプラーザでは食と環境をテーマに進められているM-NEXプロジェクト。2019年度は、昨年12月に開催されたデザインワークショップ「田園都市の食生活のRe-Design」で出された“シェアキッチン”のアイデアを具体化したイベントから5月18日にスタートしました。

シェアキッチンの背景

 このシェアキッチンは、次世代郊外まちづくりの一環でコミュニティカフェとして運営されているPEOPLEWISE CAFÉさんの「一緒に何かやりたいですね」という一言から一気に具体化。地域のコミュニティ形成により積極的に関わりたいというカフェ側、さんかくBASEという素敵な場所、地域のみんなの熱意による素晴らしいマッチングでした。3月と4月には、みんなが企画会議を繰り返し、たまプラーザにとって「どんなシェアキッチンがいいか」考えてきました。3月の第一回企画会議では、地域のシェアキッチンの先駆者の方々もお招きしながら、シェアキッチンの課題と現状を共有し、何がシェアキッチンに求められているか、議論しました。4月の会では、これから街のコミュニティで活動していきたい料理活動家の方や、地域のイベントに多数関わってこられた方にもご参加いただき、より具体的に構想を練ってきたのです。こうして、シェアキッチンの第一回を飾るシェアBBQの準備が進められ、コミュニティを豊かにすることと、食や環境への取組みを抱き合わせた企画として進められてきました。

地域の食環境の調査成果報告会

 当日は、まず「食」のアプローチの経緯から。慶應義塾大学の厳網林研究室より、M-NEXプロジェクトの一環としてPEOPLEWISE CAFÉさんと共に実施した地域の食環境に関する調査の成果報告会からスタートしました。この中で、研究室の学生から、M-NEXのワークショップから生まれたアイデアがPEOPLEWISE CAFÉさんのご協力のもと始まったことや、地域の食料アクセスの実態について説明しました。これに対して来場者の方から、「こういう活動がまだまだ知られていないことがもったいない。こういうことをもっと周りにアプローチすればデータももっともっと集まるはず。例えば、小学生を対象に夏休みに一緒に調査をするイベントを作ってみてはどうだろうか」とのご意見も頂き、今後の研究活動と地域のリンクを考えた方向性についても議論する時間となりました。

シェアするBBQ

 そしていよいよ、BBQの時間です。参加者が三三五五 と集まって40名もの参加者に。食材もどんどん集まってきました。ここでも、受付の際に、どこから買ったのか、どこの産地のものか、どういう交通手段で買いに行ったのか、などをヒアリングし、マッピング。単なるBBQではない、食や環境への取り組みを感じてもらうシーンだったと思います。


 さて、ここからは「食とコミュニティ」を組み合わせた時間です。料理活動家の寺岡さんと宇田川さんによる、子供向けBBQのドレッシング講座は大盛況。ママさんたちも興味津々でした。お二人の料理と健康に関する深い知識が発揮され、新たな繋がりが生まれた瞬間でした。こうした場面がたくさんみられたのがこのBBQが普通のBBQと違うところだったように思います。団地の子育てファミリーや小学校を卒業して離ればなれになった中学生、おやじの会、いろいろな輪が火を囲みながら繋がりました。

繋がることで見えてくるもの

 こうした輪が繋がっていく中で、会話は自然とお互いに困っていることの話になるものです。団地の子育て家族は、「夫婦共働きで夜9時に帰宅してから晩御飯を作り、次の日は6時に起きないといけない」。「作りたてのものがすぐに食べれたら大変ありがたい」。こんな話が聞こえてきました。みんなで食べる時間がすごく貴重な機会で、ここで繋がった人々がお互いに助け合いながら豊かな郊外生活を送れるようになれば、それは素晴らしいことです。

 この会は、繋がること(NEXUS)で、この街で持続的に豊かな生活を実現するための試みです。このような試みは、シェアするBBQ以外にもたくさんあるでしょう。実際にたまプラーザではWISE Living Labを中心に、様々な活動が行われています。今後、こうした活動がより活発に進められるためにどうすればいいか、それを通して近年注目を浴びるSDGsにどれくらい繋がるか、皆さんと一緒にやっていきたい。

 最後に、こういう活動をこれからも続けてほしいとの要望も上がり、そのためにプロジェクト名称を募集しました。いろいろなアイデアが提案されました。例えば、”さんかく”ベースを拠点に、みんなが”参画”するような「食」からのアプローチということで、「さんかく食堂」はどうかというのがありました。これについては、次回以降、また検討していけたらと思います。 

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慶應義塾大学環境情報学部 EcoGIS Lab(厳網林研究室)