四川大地震・都江堰市復興グランドデザインプロジェクト報告

6月はじめに始まった「四川大地震,都江堰市復興グランド・デザインプロジェクト」は先週末の12日,13日に,現地都江堰市にて,提案発表会が行われました.12日に,先月ノミネートされた10チームが,それぞれのデザイン提案を発表・展示し,13日に専門家委員会が全般的に関する講評を行いました.
この活動は無報酬,無賞金のため,優勝は選びませんでした.講評会の最後に,主催者の成都市人民政府から参加した各機関に「都江堰市復興計画設計名誉賞」が授与されました.慶應大学も写真のようなトロフィーをいただきました.提案された10の計画案は,都江堰市の復興をタイアップで支援する上海市にある同済大学チームが責任を持って統合し,最終復興計画を8月までに策定することになりました.

私たちは東京大学石川幹子教授をリーダーに,東京大学,慶應大学,西南交通大学が密に連携したもとで進められました.世界遺産都市の再生と地球環境共生都市への復興という理念の下で,高解像度衛星画像を駆使しての被害評価,水路・緑地・文化遺産の抽出とネットワーク化など,2300年の水利プロジェクトとそれによって形成された水の都としての自然的文化的コンテクストを丹念に読み取り,震災復興と都市再生の基礎を「水都社区」(水の都のコミュニティの意味)という空間単位に立脚し,速やかな復興という現実課題への対応と,都市の再生という将来ビジョンを一体化したことが特徴で,会場から数多くの好評をいただきました.プロジェクトを通して,私たちのチームのコンセプトの先端性と,計画デザインの実力,プロジェクトに対する科学的姿勢,学際的連携の効果などを,十分に示すことができました.

大地震後,日本から多くの学会代表団や業界代表団が現地視察に入られていますが,復興活動に直接参加したのは,私たちが一番早かったと思います.一か月というきわめて短い期間に,東京大学からは石川研究室(プロジェクト総括,パークシステムなど),小出・加藤研(防災),西村研(歴史街区),大方研(土地利用)など,慶應大学からは厳研(情報整備,人口予測,被災評価,農村社区),松原研(新区のデザイン),理工学部小檜山研(耐震建築),経済学部長田研(産業政策),現地からは西南交通大学建築学院など,延べ80人以上の教員・学生が動員されました.日中間,大学間,研究室間,密に連携し,膨大な作業を日夜なく続けて,ようやく成し遂げた成果です.私たち教員も学生もこのような実践の場を通して,多くのことを学びました.また,現地政府,大学とのネットワークも構築できました.今回の活動を基礎に,これからも復興プロセスに積極的にかかわっていきたいと思っています.

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慶應義塾大学環境情報学部 EcoGIS Lab(厳網林研究室)